福島第1原発の爆発事故をめぐり、後手後手の対応や隠蔽体質に批判が殺到している東京電力。所管する経済産業省原子力安全・保安院も人ごとのように
「問題ない」と繰り返す一方で、現場担当者が地元住民より遠い山向こうまで避難し、国民に強烈な疑心暗鬼を植え付けている。国も本社もアテにできない非常
事態の中、最少人数で作業にあたる現場の原発作業員たちは、まさに決死の覚悟で戦っている。
《Handful of “heroes” battles to keep nuclear plant under control》(一握りのヒーローたちが、原発の制御を維持するために戦っている)
米CNN(電子版)は15日、同原発をめぐる記事の中で、こんな一文を掲載した。
彼らヒーローとは、言うまでもなく、同日朝に大爆発を起こした2号機で、真っ暗闇の中、懸命に注水作業を続ける東電や協力会社の社員たちだ。中には、家族が今回の地震で被災。いまだに連絡が取れない人もいるという。
放射線量が急上昇した現場では同日朝、800人いた作業員が必要最小限を50人に縮小。その後、政府が作業員の被ばく量の上限を上げ、20人増員した。
現在は70人の作業員が15分交代で注水を継続。彼らは、自然界で人が1年間に浴びる放射線量許容量の最大400倍にあたる400ミリシーベルトを浴びながら、作業を続けている。
山火事消火のように、上空から放水すればよさそうなものだが、屋根の損傷部分と冷却プールが数十メートルも離れ、1度に運べる水の量が少ないことから事実上不可能。日本の命運は、文字通り一握りのヒーローに委ねられているのだ。
新たなヒーローも誕生している。地方の電力会社に勤務する島根県の男性(59)は、定年を半年後に控え、志願して応援のため福島へ向かった。
会社員の娘(27)によると、男性は約40年にわたり原発の運転に従事し、9月に定年退職する予定だった。事故発生を受け、会社が募集した約20人の応援
派遣に応募。出発当日、家族に「今の対応で原発の未来が変わる。使命感を持っていきたい」と告げ、普段通り出勤していったという。